勝間和代十夜 第零夜
勝間和代十夜 第零夜
とにかく…うっとうしくて寝られない日々が続く。
何が何でも眠らなくてはいけないという義務感で眠ろうとするとますます寝付けない。それゆえに、無理して寝ようとはせず、本棚から通俗文学の雄と言われる作家の本を取り出して読む。
物語にのめり込みすぎ、ますます眠れる気配がしない。確かにその作家の書き方はマンネリズムには堕してはいるもののむしろそれがかえって魅力を紡ぎ出すという、逆説的な要素を持っている。
私はさらに目が冴えた。
しかし、なんだろう…
読み続けていくと、おのおののページの最初の文字が、
『か』、『つ』、『ま』、『か』、『ず』、『よ』の順に並んでいることに気が付いた。
さらに、この本…小説ではあるのだが、そのおのおのの題名の始まりの文字が、
『勝』、『間』、『和』、『代』、と並んでいる。
それは何を意味するものか…
「ウィンウィン...」
私の脳内でこの音が鳴り響く。
そうこうして本を読み進めているうちに私は、目の前にある中年女性の幻影を見た。どこかで見たことのある顔…むろん、dankogaiではない。dankogaiの顔が女性の顔だとしたらあまりにも不気味すぎて、睡眠どころか昏倒してしまうだろう。
そう、その女性の顔、『ウィンウィン』という音や妙な覚醒感とともに、ようやく思い出したのだが、それが、その人物が勝間和代という人であったのだ。
そして、その勝間和代がこの本を音読しているという幻覚に悩まされながら、私は、朝の光を見たのであった。
『ウィンウィン』、『ウィンウィン』という音とともに…
「助けてくれ!」
ますます私の不眠症は悪化したのかもしれない。